私は鼻が効かない。
匂いはわからない。
耳を澄ます。
周りから音は聞こえない。
目を開けてみる。
視界に入るのは黒と白のモノクロ世界。
何があったのか?
周囲の全てが色を失っている。
声を上げる。
自分では何かを叫んでるつもりなのに声は空気を震わせることはない。
意識が覚醒する。
急に周りの喧騒、色彩豊かな看板が眼に入る。
ちょっと休憩するつもりで座った駅のベンチで知らないうちに寝ていたらしい。
空からは白い浮遊物が舞い落ち、地面を覆っていく。
明日は全てが白の世界になっているだろうか?
願わくば私の憂鬱な気分も真っ白な雪で覆い隠してほしいものだ。
例えそれが溶けてなくなるまでの短い間だけだとしても。