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第262話 或る男の物語

昨日、寝たきりで水分しか摂っていなかったので、今日の昼は
ちょっと大盛らーめんなどを食べてみました。
・・・病み上がりで大盛はやめときましょう(;へ:)

或る男の話です。

男には小学校時代から仲の良い女の子がいました。
いつも一緒という訳ではありませんでしたが、よく話をしたり、
遊んだり、ふざけあったりしていました。
中学に入る頃、女の子は親の都合で他県へと引っ越していきました。
ですが、男はその女の子の共通の友人と共によくその引越し先へと
遊びに行っていました。

・・・それから数年が過ぎ、男もその女の子のところへ遊びに行くことが
めっきり減っていました。そんなとき、女の子から一通のメールが届きました。
「母が他界しました」
生前、女の子の母親に何かとお世話になっていた男は葬式に出席し、
久しぶりに女の子に会いました。
母親と仲のよかった女の子は少なからずショックを受け、沈んでいる
ように男には見えました。
その姿を見て、男は「少しでも気が紛れるなら」と思い、毎日女の子に
メールをするようになりました。
学校であった馬鹿話、普段から気になっているモノ、こんな事に腹が
立った等、思いつく限りをつたない文章で送り続けました。
ある時、男は、母親が亡くなってから家事を一手に引き受けている
女の子をたまには、と思い、海辺の公園へと誘いました。
メールでのやりとりが主になっていた二人は、メールでは書ききれない
色々な事を話しました。

その後、女の子から月に一度のペースくらいで遊びに行く誘いが
男に来るようになりました。遊びに行けば男は女の子に振り回されっぱなし
でしたが、明るさを取り戻した女の子を見て、男は喜びました。
それに伴い、男にある感情が芽生えたのですが、その事を女の子に
伝える事なく時が過ぎていきました。
言わなくてもわかっているだろう、男はそう思っていました。

ところがある日、女の子からのメールを開くと
「たまにはあなた以外の男の子とお酒を飲んでみたい・・・etc」
と書かれていました。
男はそのメールを見て、
「俺の役目は終わったな」
と思いました。
当初の目的である「明るさを取り戻す」、は当の昔に達成されて
いましたが、必要とされなくなるまでこのままでいようと男は考えて
いました。男にとっても、楽しい日々であり、その女の子と過ごす
時間がかけがえなく感じるようになっていました。
ですが、女の子の文面からは自分を必要としていないように男には
感じられました。
そこで男はこう言いました。
「格好いい男は紹介できないぞ」
女の子からは
「何でそんな事言うの!」
と即座に激昂した調子で返事が返ってきました。
しまった、男は思いましたが、後の祭りとなってしまいました。
そのまま喧嘩別れ、互いに連絡をとらないまま時が過ぎてしまいました。

男には未だにあの時の女の子の気持ちがわかりません。
自分という存在は彼女にとって何だったのか?
あの発言の意図は純粋に誰かを紹介して欲しかったのか?
聞くべきだったのかもしれません。
しかし男にはその勇気はありませんでした。
今となってはどうしようもありませんが、自分の気持ちはちゃんと
伝えるべきだった、と男は思っているようです。
黙っていても伝わるはず、人間はそんなに便利にはできていませんから。
by mkom00 | 2005-09-27 16:40 | 第201~300話
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